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益虫・害虫の話 (4)〈Part 1〉ザ・コクロウチ、害虫から薬まで

2024.03.15

「益虫・害虫の話」 (4) Part 1
―:ザ・コクロウチ、害虫から薬まで:―

虫と云う生き物は、人の都合によって珍重されたり、毛嫌いされたりその評価の温度差が大きい。
不思議なのは、「蝶」は好きだが、「蛾」は嫌いだとか、カブトムシは欲しいが、コガネムシには眼もくれない人の居ることだ。
だが、ゴキブリは殆どの人が嫌いだと云う。その理由は、汚い、気持ちが悪い、病原菌を持っているからだと云う。
確かに、ゴキブリは、衛生害虫に位置つけられているが、しかし、幸か不幸かこれを大々的に「ワル虫」と決めつける「悪行」を体験した事が無い。
だが、このゴキブリは、その発生場所や状況によっては、無関心では居られない。
今日、日常生活の場では、食の「安全・安心」が大きな課題となっていて、ゴキブリもその円周上にある。この機会に、ゴキブリを今一度、見直す必要がある。
ゴキブリは、直翅目のバッタ、コオロギ、カマキリ等に近い仲間である。その地球への適応性は、今から約3億年前の石炭期中期に地球上に現わしただけに高い。
日本に生息する主要な家住性ゴキブリは、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、コワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、ヤマトゴキブリなどである。
ゴキブリが問題なのは、その生活史が「不完全変態」であって、卵から孵化した時から歩行し、活動期間の長い事である。
人の病気との関係は、ウイルス、細菌、原虫などの病原微生物を伝播する確かな伝播者である。
実際に病院などのゴキブリを調査した所、入院患者の持つ病原菌が発見されている。
何れにしても、人由来の病原微生物の伝播者である。また、ゴキブリは、喘息のアレルゲンとして知られている。
このように、ゴキブリは問題をかかえており、集団生活の場や食品製造及び取扱施設等にとって、油断の出来ない虫である。
しかし、このゴキブリは、意外な使われ方もされていた。あまり、一般的では無いが、外国航路の船で、多発するゴキブリを船員が、食用に供した話もあった。
昔、ワモンゴキブリの塩焼きにしたものを消化の薬として用いていた。また、黒焼きにして粉末にしたものは、感冒や寝小便に効果があるとも云われていた。
「漢方絶論学」と云う本に、ゴキブリを油で揚げ、粉にして毎日少量を飲用すると「ぜん息」の薬になるとも云われている。
一時、話題になったが、サツマゴキブリが漢方薬として用いられた。これは、肝硬変やアトピー性皮膚炎に効との事であった。 
ゴキブリは、害虫と云う顔と薬として役に立ったと云う両面性を持った変わり者だ。

画像説明
このゴキブリ、害虫か?漢方薬か?なんと、これはペットだと云う!!

林 晃史氏
 元千葉県衛生研究所次長
 東京医科歯科大学医学部非常勤講師

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