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益虫・害虫の話 (5) (Part 2)殺虫剤の速効性とは何なのか

2024.03.15

前回、殺虫剤の使い方、いわゆる施用法について紹介したのだが、此処ではその〝効き方〟について解説する。

ひとが殺虫剤を使ってまで、虫退治をする目的と期待は、何だろうか。それは、虫からの刺咬、吸血および不快感などの直接的被害の回避、防御を期待したものである。

また、使用者の求めているのは、その効果が迅速で確実に現れる事である。より速く、確実に虫の行動を抑える「力」、これを「速効性」と呼んでいる。

この現象をイエバエ成虫とチョウバエ成虫で具体的に紹介すると以下の通りである。

イエバエは、生活の場の代表的な飛翔性害虫で、チョウバエは食品工場等の問題である。

使用した殺虫剤は、0.3%DDVP剤、0.5%スミチオン剤、0.5%アレスリン剤、0.25%ピレトリン剤、0.2%スミスリン剤と、0.2%ペルメトリン剤の5種類で、いずれもエアゾール剤である。

これらの殺虫剤は、最も普通のもので、虫に直接噴霧する使い方をする製剤である。
殺虫剤の効果を比較するには、同じ条件下で実施する必要があるので、実際の部屋の縮小モデルを作り、この中にイエバエやチョウバエを放ち、所定量のエアゾールを噴射し、経時的に飛翔能力を失い、床面に落下仰転する虫数を観察する方法によった。

この方法は、「0.5㎥箱型法」と称する公定法である。観察の結果は、規定の統計処理を行い、KT-50値(分)を算出して比較を行うものである。

KT-50値とは虫群が薬剤に被毒してから時間の経過に伴う致落下仰転率が50%に達する所要時間の事である。

比較したら5種類の殺虫剤の効果はグラフに示したが、KT-50値の値が小さい程、速効性が高いと評価される。

イエバエ成虫のKT-50値:ピレトリン、2分30秒>ジクロルボス、2分46秒>ペルトメリン、2分53秒>スミスリン、3分09秒>アレスリン、5分12秒>スミチオン、6分21秒の順に低下する。

オオチョウバエ成虫のKT-50値:ピレトリン、2分58秒>ペルメトリン、4分19秒>スミスリン、4分57秒>アレスリン5分55秒>ジクロルボス、10分17秒>スミチオン、27分40秒の順に低下した。

以上、総合的に見ると0.2%ピレトリン剤が、最も速効性の高い殺虫剤といえる。また、それに次なるものは、0.2%ペルメトリン剤、ピレスロイド系殺虫剤が有効的なものといえる。

イエバエ成虫のデーターは、他の昆虫を代表し得る事になっているので、ピレスロイド剤は、ハチ退治にも役立つ製剤と言える。

以上が殺虫剤の速効性という事である。

林 晃史氏
 元千葉県衛生研究所次長
 東京医科歯科大学医学部非常勤講師

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