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益虫・害虫の話 (6)〈Part 1〉恐い秋のハチとその効用

2024.03.15

今年は、どうした訳か、ハチの巣の「除去」の依頼が多かった。これは、天候の所為もあるが、人の生活習慣の変化も大きく関与する。

この問題のハチは、「スズメバチ」(胡蜂)が主要なものである。このハチは、社会性であり、一般に「女王」、「働蜂」、「雄」の三型からなっている。

この生い立ちは、雄が無精卵から生まれ、女王が春先から造巣にかかり、働きバチの活動期に移る。その生活史は、図に示す通りである。

その生活は、朽ち木の中で越冬に始まるが、夏の働きバチの活動で、人目をひくことになる。
人に被害が増えるのは、晩夏から晩秋にかけてである。それは、巣内に新しい雄雌が生まれ、餌が不足することで、攻撃性が増すからである。晩夏のハチは刺激しないことが、大切である。

日本のスズメバチは、スズメバチ属が7種で、クロスズメバチ属が5種、ホオナガスズメバチ属が4種の16種がある。その内、よく知られているのが、キイロスズメバチである。
キイロスズメバチは学名をVespa Simillima Xanthoptera といい、英名をYellow Wasp,Japanese hornet などという。
このハチは、もともと森林、雑木林、丘陵地帯を棲処とし、樹木の害虫を捕食する大切な「天敵」であった。
これが、人の都合による都市化の進む中で、森林の伐採や土地造成による環境の破壊で、生活の場を失い都市へ移動した。
この都市化によって市街地に姿を見せるようになった代表的なハチが。キイロスズメバチで、人はこれを「都市型害虫」と云う。
何故、このハチが都市に定着したのか、その秘密は、キイロスズメバチにとって、安住の地なのである。

この働きバチの体長は、17~25㎜と大型で、女王も25~28㎜もある。また、この巣は大きく、巣の中の房室数はなんと2000から10000室に達する。
これだけの「ハチの子」を育てるには、働きバチの苦労は並では無い。しかし、人の食糧源としては、絶好なものである。
巣を造る場所は、木の枝、崖棚(ガケダナ)、橋の下、人家の軒先、樹洞、人家の壁間、屋根裏、土中など解放空間から遮閉空間と広範囲にわたる。
このハチの食性は、非常に多様であって、各種の昆虫類やクモ類を捕食(狩る)し、肉団子にして幼虫の食料とする。

また、成虫は花蜜や樹液、人の飲み残したジュース類をエネルギーとする。
このように、働きバチの捕食性には、天敵として効用が高いが、成虫の果実類に対する吸蜜性などは、干果製造業や果実の缶詰製造業にとっては、害虫である。このハチは、功罪を伴わせ持つ虫なのである。

林 晃史氏
元千葉県衛生研究所所長
東京医科歯科大学医学部非常勤講師

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