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益虫・害虫の話 (6)〈Part 2〉殺虫剤の残効性とは何なのか
2024.03.15
殺虫剤とは、虫からの被害を防ぐために用いられる化学物質である。その殺虫剤を求められている性質は、速効性と残効性と云う性質である。
速効性については、前回、解説したが、今回は、「残効性」について解説する。
残効性とは、対象とする害虫に対し、有効性の持続期間の長さを云う。問題虫は、発生してからある期間、加害活動をするので、この間の有効性が求められている。
それは、殺虫剤を処理した最初の時点の殺虫力が、そのままで保つ期間を云う。その期間が、時間単位なのか月単位なのかは、その対象虫によって異なる。
ここでは、「チョウバエ」の成虫防除を例に紹介する。チョウバエの成虫は、自力による飛翔範囲が狭く、かなり限定されているのでその効果が判り易い。
このような、成虫の止ると想定される場所に殺虫剤を撒き、退治する方法を「残留噴霧処理」云う。
この方法は、チョウバエの成虫が、静止・休息すると想定した場所に、所定濃度の殺虫剤を処理するものである。
残効性は、薬剤の処理された面の殺虫力が当初のまま保持し続ける期間のことである。この期間は、対象虫の寿命の長さや発生回数で、期待値が異なるが、一般に1ヵ月を目安としている。
オオチョウバエ成に対する殺虫剤の残効性の実験例を紹介すると次の通りである。この評価は、成虫が薬剤に接触し、効力発想に要する時間のKT-50値(分)で示した。
ピレスドイロ系殺虫剤のペルメトリンの処理後の経過日の異なる面のKT-50値は、次の通りである。
処理直後は、13分であったが、7日後には13分、14日後で16分、30日後でも19分であった。処理直後の価から30日後の価の違いは、6分であり顕著な低下は認められない。
有機リン系殺虫剤のプロペタンホスでは、直後が20分、7日後が22分、14日後が22分、30日後においても22分であった。
以上の2種類の殺虫剤は処理後1ヵ月にわたって、当初と異なることなく充分な殺虫力と発揮するものであることが判る。
この残効性は、評価方法を処理面にチョウバエ成虫を24時間継続接触による致死率で判定するものにすると6ヵ月以上も、その効果を持続する。
現在、市販の殺虫剤は、以上のような実験で効果を確認し、上市されている。殺虫剤を安全に、かつ有効に使うためには、このような資料を確認しておくことが大切である。
林 晃史
元千葉県衛生研究所所長
東京医科歯科大学医学部非常勤講師