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益虫・害虫の話 (7)〈Part 1〉ハチが作り出す食品類
2024.03.15
前回は、人に危害をもたらす「スズメバチ」に」ついて紹介した。このハチによる被害は、今頃から多発する。
また、この時期には、羽化したハチ達が交尾をする時期で、受精した「新女王」が、越冬場所を求めて、家屋内に侵入してくる。これは、翌年に向けての準備である。
こんな「ハチ」でも、恐ろしいだけの存在ではなく、その幼虫などは、「蜂の子」などと称し、珍味として人の口にのぼる。

また、同じ「ハチ」でも人が、家畜同様に飼育して、その生産物を「収奪」されているハチもいる。
それは、「ミツバチ」と称するもので、その「蜜」が利用されている。これを、〝養蜂〟と云う一つの産業を構成し、その歴史も紀元前に逆上る。
この「ミツ」の栄養価は高く、古来より貴重品として扱われていて、いまだに、その価値を失わない。
このミツバチについて、少し詳しく紹介するとおおよそ次の通りである。
このミツバチは、ミツバチ科に属するもので、わが国には、2種類が知られている。それは、ニホンミツバチとヨウシュミツバチ(セイヨウミツバチとも云う)の2種である。
この「働きバチ」の大きさは、体長が13ミリ前後で、その体色がニホンミツバチとヨウシュミツバチと若干の違いがある。前者は、やや黒味を持ち、後者はやや黄色を帯びている。
その生態は、ひとつの巣が1匹の女王蜂を中心に数万匹の働き蜂で構成されている。
働き蜂は、3月から4月にかけて活動を開始し、蜜や花粉を採取すると共に、巣の中に「王台」を造り、新女王の出現に備える。
面白いのは、旧女王は、新女王の羽化前に、おおよそ半数の働き蜂を連れて、新しい営巣場所を探して飛び立つ事である。これを分封という。
分封の時期に、突然、家の軒下や街路樹の枝に、虫の塊が出現し、人を驚かせる事がある。
養蜂では、巣箱の中で4年から5年も生存し、卵を産み続けるという神秘なエネルギーを持つ。
このミツバチは、人を全く攻撃しないと云うものではなく、まれではあるが、分封したセイヨウミツバチに襲われて、死亡した例がある。
ミツバチノの毒成分は、いくつか知られているが、主要なものとしてメリチンがある。
これは、赤血球に作用すると溶血を示す。
ハチに過敏性体質の人も居るので、たかがハチ刺されと軽視してはいけない。
ハチの産物は、珍貴、高価値であるが、ハチ毒のある事も忘れてはいけない。
林 晃史氏
元千葉県衛生研究所次長
東京医科歯科大学医学部非常勤講師