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益虫・害虫の話 (8)〈Part 1〉晩秋の候の問題虫、カメムシ

2024.03.15

山々が、黄色や紅に色づく頃、住居の日当たりの良い場所や塀などに点々と蝟集する虫に気付く。

この代表的な虫が、「カメムシ」である。我が国に約600種が知られている。カメムシは、地方によっては屋内にまで侵入し、話題になる。

東北地方の温泉宿では、この虫の発する悪臭で、宿泊客から苦情が出る例もある。この虫は野外活動性であるが、越冬のために暖かい場所に潜り込む性質がある。

カメムシ類は、人畜に対する直接的な害を及ぼす事は無いが、刺激すると悪臭を放つため、不快虫とされている。
カメムシ類の多くは、農業害虫であるが、「稲、いね」を加害するイネクロカメムシ、トゲシラホシカメムシなどが知られている。
これらのカメムシは、稲の出穂期から乳熟期にかけて吸汁加害し、「斑点米」の原因となっている。

また、アオクサカメムシやイチモンジカメムシなどは、「まめ類」や「アブラナ科」の大害虫として知られている。

人の生活の場では、雑草の「クズ」に発生したマルカメムシ(Globular Stink bug)が、越冬のために、屋内に侵入し問題になった。

また、北海道では、スコットカメムシが屋内に侵入し、問題になった。やっかいなのは、越冬のため侵入時に「悪臭」を放ち、また、冬眠からさめた個体が野外に出ていく再び悪臭を放つことである。

この悪臭は、胸部覆面の中脚と後脚の間にある臭腺開口部から放つ、外敵に対する「防御物質」である。この物質は、ヘキサナール、トランス-2-デセール、トランス-2-オクテナールなどが知られている。

害虫、不快害虫と嫌われる「カメムシ」には、意外な効用があると云われている。それは、種類によって違いがあるようだが、歯痛、リュウマチの他、腎臓、肝臓および胃病などの慢性疾患に効くと云われている。

また、漢方にツマキクロカメムシを「九香虫」と称し、薬用として用いたとも云う。それに、カメムシの成虫体に菌が生えて死んだ生体乾燥品を「椿象覃(チンチウタン)」と云い、不老長寿の霊薬とか?
紅葉と共に里にやって来る「カメムシ」の異臭は、新たな発見につながるのかも知れない。

林 晃史氏
元千葉県衛生研究所次長
東京医科歯科大学医学部非常勤講師

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