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益虫・害虫の話 (15)〈Part 2〉防虫・虫除け剤の変遷(2)

2024.03.15

前回、防虫剤の位置付けについて述べ、今日、繁用されている「パラジクロロベンゼン系」に代わると目されているのは、ピレスロイド系化合物であろうと述べた。
 今回は、ピレスロイドの虫除け機能について話を進めたい。なお、その適用範囲は、日常生活の場や食品扱いの場も視野に入れて考えたい。

虫除け機能を持つピレスロイド

ピレスロイド系化合物は、安全性の高い殺虫力の有る物質である。生活の場で、虫除けを目的に使用されている主要な製剤は、「蚊取線香」で、この効力や機能については、このシリーズで紹介した。
 このピレスロイドの殺虫効力を発揮させるには、何等かの「エネルギー」が必要である。この蚊取線香と云う製剤のそれは、「熱」であった。
 消費者が、製品を使用する場合には、機能が簡単で、使用し易い事が必要である。したがって。自然のまま有効成分が放出される事が好ましい。
 その要求に応え、開発されたピレスロイド化合物の最初のひとつが、「エンペントリン」である。
  
エンペトリンとは
 エンペトリン(Empentrin)は合成ピレスロイドで商品名をベーパースリン(Veporthrin)と称し、毒性が低い。
 急性経口毒性LD50値は、ラットで2280mg/kg(♂)、1680mg/kg(♀)であり、経皮毒性も5000mg/kg以上である。
 この特徴は、室温で蒸散し、臭気の無いことである。ことに衣料害虫の「イガ」に対する効果が高い。
 この物質は、「熱」と云うエネルギーに依存せずに、虫除け効果を発揮するので、含浸や練り込むと云う剤型で製品化された。
 なお、その効果の程は、イガで調べたところ、表1.のような結果であった。
 現在、広く使用されているパラジクロロベンゼンよりも、はるかに有効である。また、揮散性に富んだDDVPよりも、有効である。
このエンペントリンを皮切りに、新たなるピレスロイドの開発が進み、虫除けの製剤は多様化して来た。

林 晃史氏
元千葉県衛生研究所次長
東京医科歯科大学医学部非常勤講師

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