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益虫・害虫の話 (17) 〈Part 2〉忌避剤という化学物質

2024.03.15

今日、一般家庭で広く用いられているのは、ムシよけスプレーで、吸血性昆虫を対象としたものである。
 その有効成分は、DET(ジエチルトルアミド)で、製剤にはエアゾールを始めとして湿布用など多用である。
 これらが、ハチ類に対して有効かと云うとかなり疑問である。ハチの攻撃から避けるには、服装を充分にする事が基本である。
 忌避剤と云うと「蚊・ブユ」を思い起こすが、寄生性ダニ類やゴキブリの防除にも有効である。
 こんな中の主要なものを上げると、次のものがある。
 タブトレックス:
 この化合物は、比較的古く、特に家畜用(放牧牛など)の忌避剤として広く使用されていた。
化学名は、ジ-mブチル・サッシネートと呼ばれ、
構造式はCH3(CH2)3OCOCH2CH2COO(CH2)3CH3で、無色の液体である。
 経口急性毒性は、ラットで8000mg/kgと低毒性である。このタブトレックスは、吸血昆虫にも有効であるが、アリやゴキブリに対し有効である。
 もともと、家庭用のゴキブリ忌避剤に適していたが、〝殺す〟と云う事が先行した時代に開発されたため、その出番を失った忌避剤である。しかし、今、再吟味されるべき忌避剤である。
 MGK‐11(レッパー111):
 この化合物はゴキブリ用に開発されたもので、急性経口毒性がラットで2500mg/kgである。当初、実用製剤には、カ、ブユ用に0.2~5%の軟膏やローションなどがあった。
 この物質も、ゴキブリ用として有効であるには関わらず、繁用製剤の開発までに至らなかった。
 その他:
 以上の他に、MGK-R-326、MGK-R-874、B・P・リペレント、インダロンなどがあったが、登場の時期が悪く、本来の機能を発揮する機会の無いまま、埋没している。
 忌避剤は、刺咬・吸血の防止が先行したため、〝噛じる〟を避けるあるいは、〝潜む〟を阻害するなどを考えなかった。
 今日、総合的有害生物管理(IPM)の時代を迎えて居り、過去の物質の見直しが必要である。

林 晃史氏
元千葉県衛生研究所次長
東京医科歯科大学医学部非常勤講師

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