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シバンムシ駆除と再発防止対策|プロが教える失敗しない方法
2025.11.20
東化研株式会社 取締役会長

シバンムシは家庭や食品工場、倉庫など、あらゆる場所で発生する厄介な害虫です。乾燥食品や書類、木材などを食害し、気づいた時には大量発生していることもあります。本コラムでは、シバンムシ駆除やシバンムシ対策の基本と再発防止のポイントを、害虫・害獣防除の専門家の視点で解説します。
目次
気づいたら大量発生?シバンムシ被害の厄介さ
家庭やオフィス、食品工場、倉庫など、あらゆる場所でシバンムシ被害が報告されています。食品や木材、書類、畳など被害対象は100種類を超え、発生源を突き止めるのは簡単ではありません。特に温度や湿度が高く風通しの悪い環境では繁殖が早く、人目につかない場所で静かに被害が進行します。一度発生すると被害は短期間で拡大し、放置すれば再発を繰り返す厄介な害虫です。被害を最小限に抑えるためにも、早期に発見し、原因を特定して適切に対処することが重要です。

シバンムシとは?発生源と被害の特徴
シバンムシ類は乾燥した食品や木材、紙類などを食害する小型の甲虫です。日本では、主に次の2種がよく見られます。
タバコシバンムシ
発生頻度が最も高く、被害も大きい害虫です。乾燥植物質のものを加害し、乾燥食品、畳、段ボール、木製家具などに卵を産みつけ、幼虫が内部を食い荒らします。
ジンサンシバンムシ
幼虫・成虫ともに乾燥した植物質のものを加害します。木製の什器や建材を好み、家具や壁材内部でよく見られます。

タバコシバンムシ
体長約2.5mm。背中は赤褐色で黄色の短毛に覆われている。上ばねに光沢がある。触覚はノコギリ状。

ジンサンシバンムシ
体長約2.5mm。背中は赤褐色で黄色の短毛に覆われている。触覚の先端の3節が大きい。
成虫は光に引き寄せられて飛び、建物内を自由に移動するため、あらゆる場所に被害が広がる可能性があります。条件がそろえば一年を通して繁殖が続くこともあり、業務上のリスクも無視できません。これらの発生環境を理解することがシバンムシ対策の第一歩です。
(参考文献:松崎沙和子・武衛和雄著「都市害虫百科(普及版)」朝倉書店 2012年 p67・p68・p71・p72)

なぜシバンムシが食品工場や倉庫・家庭で増えるのか?
シバンムシの発生には、環境や管理状態が大きく関係しています。
事業所や施設では、倉庫や製造ライン周辺での発生が多く見られます。段ボールや原料袋などを長期間保管していると、内部にシバンムシが侵入して卵を産みつけることがあります。また、清掃が行き届きにくい機械の裏や資材棚の下なども、温床となりやすい場所です。
家庭では、乾燥食品やペットフードなどが発生源となるケースが一般的です。特に開封済みの食品を長期間保存していると、袋の中で繁殖することがあります。さらに、畳の内部や観葉植物の土など、有機物を多く含む場所に潜むこともあります。
まとめ:シバンムシが繁殖しやすい環境
・温度25〜30℃前後
・湿度が高く、風通しの悪い場所
・段ボールや棚の隙間、畳の裏、倉庫の資材下などの人目につかない場所
・開封済みの乾燥食品やペットフードなどの長期保管される物品

シバンムシ駆除の基本ステップ
シバンムシを効果的に駆除するには、発生源を見極めたうえで段階的に対処することが重要です。ここでは、基本となる4つのステップを紹介します。
① 発生源の特定
まずは被害の中心を探します。発生源は乾燥食品や段ボール、畳の内部など目につきにくい場所に潜んでいることが多く、見落とさないよう慎重な確認が必要です。
② 清掃・廃棄
発生源が見つかったら、被害を受けた食品や資材を速やかに処分します。周辺も清掃し、卵や幼虫を残さないことが大切です。
③ 駆除
市販のスプレー剤やくん煙剤を使用して成虫を駆除します。使用する際は対象範囲や安全性を確認し、取扱説明に沿って実施しましょう。
④ 再発防止
湿度や温度の管理、食品や資材の保管方法を見直し、効果的なシバンムシ対策と再発防止を行います。
広範囲に被害が及ぶ場合は、専門業者による現場調査と施工が効果的です。一般的な薬剤施工では対応しきれない工場・倉庫・物流施設など、複雑な現場にも柔軟に対応できます。
もう一度発生させないためのチェックリスト
シバンムシの発生を防ぐためには、日常的な管理と点検が欠かせません。以下のポイントを意識しましょう。
- 保管場所の温度と湿度を一定に保つ(目安:20~25℃、湿度60%以下)
- 段ボールや古紙類を長期間保管しない
- 食品やペットフードは密閉容器で管理
- 棚の隙間や床下を定期的に清掃し、粉やカスを残さない
- 定期的な棚卸や清掃を習慣にして早期発見につなげる
日々の管理では「清潔・乾燥・密閉」を意識することが、再発防止の3大キーワードです。

【実例紹介】こんな場所にも?東化研が対応したシバンムシ被害
事例1 外国製バレエシューズ
調査依頼の経緯
あるバレエ教室に通う生徒が、自分の靴下に2~3度続いて茶色の粉粒状のものが付いていたためバレエシューズを調べると、茶色の粉粒と、2~3ミリの白っぽい毛の生えた虫がシューズの中で動いていた。虫の正体はタバコシバンムシの成虫。茶色の粉粒状のものは幼虫の糞塊だった。
底敷は家畜のエサ
バレエシューズを解体して調べると、底敷にタバコシバンムシの幼虫から成虫の生息が認められた。事情を聞くと底敷はエコ製品で、原料は麩(ふ)だった。麩は、小麦を粉にするときに出る皮のクズで、通常は家畜のエサにするものだった。
事例2 発泡スチロールに虫?
調査依頼の経緯
ある食品会社で、輸入機械の梱包を解いたところ3ミリぐらいの丸い赤茶色の虫が出てきたと、虫の鑑定と発生原因の調査依頼が入った。虫の正体はタバコシバンムシとすぐに判明。調べると、緩衝材が入った袋の中にタバコシバンムシが混入していた。そこが発生源だった。
原因は意外なエコ製品
発泡スチロールは石油製品のため、当初、発生源としては考えていなかった。ところが、緩衝材のポリ袋の表示を確認すると、原料はトウモロコシで、環境汚染のないエコ製品だった。原料がトウモロコシならば、タバコシバンムシの発生源になる可能性があると判断した。
事例3 住宅の室内に大発生
調査依頼の経緯
ある食品会社を定年退職した知人が、自宅の部屋中に2~3ミリの茶色の小さな虫が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)していたため、虫が侵入しそうな隙間はすべて処置をした。それにもかかわらず、虫の数が増える傾向にあるため、困って当社に連絡が入った。
生態から分かる発生源
小さな虫を調べるとジンサンシバンムシだった。その生態から分かるのは、外部侵入ではなく内部(屋内)発生種で、乾燥食品の保管場所が発生源となる可能性が高いこと。調査の結果、もらいものの乾麺の蕎麦が大発生源だった。
(出典: 兵藤 有生著 林 晃史監修『招かれざる虫 食べものにつく害虫の科学推理ノート』ベレ出版 (2015年 p50・p54・p60)
【当社おすすめ】シバンムシ対策・予防グッズ
シバンムシを「発生させない・近寄らせない」ための環境づくりに有効なツールをご紹介します。
- 防虫トラップ(モニタリング用):発生源を特定するための粘着式トラップ。食品棚や倉庫の隅に設 置して、シバンムシの活動状況を可視化できます。定期交換することで再発サインを早期に察知できます。
- 密閉保存容器・防湿ケース:乾物・粉物・ペットフードなどを完全密閉。家庭だけでなく、飲食店舗や食品工場でも効果的です。
- くん煙式防除剤・残効性スプレー:発生初期や局所的な発生に対応可能。ただし、人や食品がある 環境では使用タイミングに注意しましょう。
- 環境改善アイテム(除湿剤・換気ファン):湿気が多い環境は幼虫が成長しやすくなります。除湿・ 換気を組み合わせて、発生しにくい空気環境を維持しましょう。
対策アイテムを組み合わせることで、「駆除から予防」への第一歩を踏み出せます。現場の環境や被害の進行度合いによって最適な方法が異なるため、環境の変化に応じた継続的な見直しが重要です。日々の点検と適切な対応を積み重ねることが、効果的な防除につながります。お困りの際は、ぜひ東化研までご連絡ください。
本コラムは、横浜市の東化研株式会社が、発生源の特定から防除施工まで一貫対応している実務経験をもとに発信しています。